あらすじ 人は一人では生きていけない・・ あなたにもかけがいのない人がいるはず。 その人が苦しんでいる時、あなたは何をしてあげられますか。 運命のいたずら 濱宮郷詞は5才の時に父を病気で亡くした。専業主婦だった母はラーメン屋に働きに出ることになる。そんな母の姿を見つめていた濱宮少年は「いつか自分が母を支えなければ・・・」と心に誓う。そんな濱宮少年はスクスクと育っていく。母親「母さん、今日も郷詞のことで褒められたわ」。いつしか濱宮は棒高跳びで全国トップを狙える選手に成長していた。 昭和56年、その年は神奈川県でインターハイが開催される予定。そのために、大会リハーサルの意味も含めて県大会が開催された。審判も選手もいつもと違う進行に戸惑いながらも大会は進んでいた。審判「濱宮君、練習跳躍を行ってください」。いつもの県大会のように休憩をしていた濱宮。いつもの大会にはないアナウンスに濱宮は身も心も動揺した。慌てて跳んだ濱宮はマットの無い地面に叩きつけられた! 母を支えるつもりが、突然の寝たきり生活に 濱宮は救急車で病院へ運ばれた。そこには残酷な運命が待っていた。第五頚椎完全損傷による四肢麻痺。手も足も動かない。それどころか胸から下が完全に麻痺してしまったのである。それからというものは、濱宮は食事をすることも、トイレに行くことも、お風呂に入ることも、寝ることも、独りでは何も出来なくなり、すべて母の介助が無ければ生きていけなくなってしまった。「自分が母を支える・・・」そう誓った濱宮であったはずが・・・。 運命の出会い 長期のリハビリを終え、リハビリ施設からの退所日が近づく頃、一人の女性が濱宮の母が経営する飲食店にアルバイトに来た。退所した濱宮とは必然的に顔を合わせることになっていく。最初は「ぎこちない」二人であったが、いつしか自然に触れ合うようになっていった。そんな二人であったが、車の運転が出来ない二人にとって、二人がデートをする場所はいつも濱宮の部屋であった。濱宮「あ〜ぁ、車を運転できればなぁ」 健常者と身障者との恋愛 その後、突然、「パッタリ」と彼女との連絡が途絶えてしまった。濱宮「やっぱり、無理なのかなぁ」。「障がい者と健常者との恋愛」に対して濱宮は心の不安を独り吐露した。そしていつしか数か月が過ぎていた。そんなある日・・・。 「トントン」窓を叩く音が聞こえる。濱宮が振り向くとそこに彼女が顔を出していた。濱宮「お前、今まで何をしていたんだよ〜」 彼女「エヘヘ」 と同時に彼女は右手を挙げて見せた。なっなんと、彼女の右手には「自動車運転免許証」があったのである。彼女は濱宮に内緒で自動車運転免許証を取りに行っていたのであった。 彼女との別れを決意 それからというもの、二人でドライブに出かけられるようになり、海、テーマパークと、二人の行動範囲は拡がり、交際は続いて行った。そして二人の交際も5年が過ぎようとしていた頃、濱宮は彼女に別れを切り出した。濱宮「これ以上一緒にいたら負担をかけることになる。そろそろ別れなければならないと思うんだ」。以前から濱宮は、彼女の婚期を考えると「彼女が25才になる前に別れなければならない」と考えていた。そして濱宮は彼女に別れを告げるのだが。彼女「私は負担だなんて思っていない。あなたの出来ないことを手伝っているだけ。あなたも私の出来ない事を助けてくれている・・・」その想いがきっかけで二人は結婚することになった。 二人に危機が・・・ 結婚生活を始めた二人に危機が襲い掛かる。彼女の舌に腫瘍が見つかり癌センターに入院する事になったのだ。医師「最悪な場合は舌を切除します」。その説明を聞き、濱宮は彼女が喋られなくなる最悪な状態を想定して、入院生活に必要な言葉(「頭が痒い」「お腹が痛い」「眠れない」などの数多くの言葉)をノート1冊に書き綴ったのである。それは今までの彼女への感謝の意味も含めてであった。 ボランティアに支えられて 濱宮は寝ることも食事も独りでは出来ない。しかし、手術に挑む彼女を励ます意味でも、彼女の入院中、濱宮は独り暮らしを決意する。濱宮がパソコン通信で事情を説明すると各地から続々とボランティアが集まり濱宮の独居生活を支えた。 二人に幸運が舞い降りる! そんな濱宮の苦労や彼女に対する心配もなんのその。幸いにも彼女の腫瘍は良性であった為に手術は大成功!その日の夕食から普通食を摂れたのである。 そんな二人に更なる幸運が訪れた。なんと、彼女が3つ子を妊娠したことが分かったのである。しかも、なんと3つ子三人の誕生日は濱宮と同じ月日であったのだ。 支え合う家族の姿 濱宮は寝たきりの重度障がい者である。そんな濱宮の子育てが始まった。車いすの重度障がい者でも子供達の運動会や授業参観などに健常者の父親同様に参加している。そして、濱宮が障害により動けない時など子供たちが濱宮の手助けをしているのである。 濱宮郷詞の現在の姿 現在、濱宮には全国各地から講演依頼が殺到している。父親の育児参加(男女共同参画)、子育て、人権教育、家族愛などのテーマでPTA、地方自治体、青年会議所、小学校、中学校、高等学校、看護学校、福祉大会、生涯学習、企業など幅広い分野で好評を博している。 妻が語る濱宮郷詞とは 「健常者の人より働いていると思いますよ。なんて言ったって一家の大黒柱ですから」と微笑んだ。 3人の子供たちは今・・・ 三人の子供達は、スポーツでは県大会上位入賞、勉強も県内トップ校を目指すほどに成長している。担任談「一人の子供を育てるのも大変なのに、三人が良い子に育つなんて子育て法を知りたい。と職員室で話すほどなんですよ」 |