23.結果発表
審査官が口を開きました。
「濱宮さん・・・」
重い空気が漂う中、審査官が続けました。
「今回はよく頑張ったね。あれだけ運転できるなら免許を渡せるよ。合格。合格だよ。安全運転するんだよ。」
今まで沈痛なムードの待合室が一変しました。
「じゃあ、手続きをするからこちらへ来てくれるかな。」
そう言われると、私はニヤケながら審査官に付いていました。
手続きを終え、その場で免許をもらい、帰路に着きました。運転をして帰っても良かったのですが、運転せずに帰りました。
「ハマぁ、よかったな。」
作業療法士もなんだか嬉しそうです。送迎の運転手さんも顔が綻んでいます。
(でも・・・良いのかなぁ?)
私は心の中で呟きました。
実は、急ブレーキをかけられない所があったのです。その場所は「S字クランク」。曲がる方向へ頭を振り、その倒れた勢いでハンドルを廻すのです。だから、身体が倒れた時に「急ブレーキをかけなさい。」と言われたら不可能なんです。しかし、「危険だから誰も居ない時にコースを走ろう。」となったので、急ブレーキをかける時が無かったのです。なので、そのまま走ったら受かってしまったのです。作業療法士もその事を知っています。しかし、試験官は身体の機能の専門家ではないのでそこまで分らないのです。
とりあえず、受かったので免許はもらいました。しかし、通常の道なら問題ありませんが、不測の事態を考えると運転する訳にはいきません。作業療法士は「そのうち良い車が出来るよ。最初から取ると<安全な乗り降りが不可能>なんだから免許はもらえないよ。良い車が出るまで更新だけしとけよ。」という考えでした。私も同感です。なので、免許だけは更新していくことにしました。
しかし、免許取得の目的は作業所への通所の手段。今のままでは通うことが出来ません。
(困ったなぁ・・・一難去ってまた一難。コンピュータ技術を習得するには、通わなければならない・・・どうしようか。)
私は途方に暮れました。
(通うことは出来ないのかなぁ・・・)
次から次と苦難が立ちはだかります。私は色々と考えました。
そんなある時・・・
「そっ!そうだ!!・・・」
私は一人大声をあげていました。 |
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第23話完 |
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